いつかの自転車泥棒

玄関先に置いていた自転車
年明け早々に盗まれた


盗人は
改造して
乗り回しているのか
それとも売り飛ばした金で
旨いラーメンでも食っているのか


くやしい
僕の自転車だ!


今日気がついたというだけで
本当はずっと前に
盗まれていたのかもしれない
夏にも秋にもまだあったはず


最後に僕が自転車に乗ったのは
一昨年の暮れのことだ

 

正月手当ありますか

新年の地下街


ずっとシャッター通りが続く


何も開いてない


と思っていると


例外的に明るい場所もある

 


スターバックスコーヒー


ダイコクドラッグ


セブン銀行


サンドラッグ


ローソン


マクドナルド

 


サービス業の中には


年中無休という形もあって


休みなく働く人もいるようだ

 

百均コンシェルジュ

僕には必要なものがある


だけどそれが何かがはっきりしない


頼りになるのは百均コンシェルジュ


彼女は僕の話をしっかりと聞いてくれる


そういうことでしたら……


確信を持って歩き出す彼女のあとを


僕は黙ってついて行くだけ


いらっしゃいませ 失礼します


うまい棒がたくさん並んでいる


コンシェルジュが足を止める


こういうのはいかがです?

 

わかりましたはさよならではない

僕の背中で長電話が聞こえる


いつ終わるのだろうか?

 


窓の向こうで100円の旗が揺れている


台車を押して行くスタッフ


胸に赤ちゃんを下げた女性


ヘッドライトが足下のセールを照らす

 


硝子の先に生きている人と


反射する内の人で時々混乱してしまう

 


「わかりました」


背中の声に僕は少し期待してしまう


話はまだまだ終わらない


信号待ちのヘッドライトが


強く僕をさす